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2023/02/16

まなびおおさか「ステイホーム応援第九弾」中河吉由樹さんの「My partnerʼs holiday 相棒たちの休日~表具師の道具~」十回目 糊刷毛

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まなびおおさか「ステイホーム応援第九弾」

京都府在住中河吉由樹さんの

「My partnerʼs holiday 相棒たちの休日~表具師の道具~」

第十回目は糊刷毛の最終回です。

 

My partnerʼs holiday

相棒たちの休日~表具師の道具~  

              京都市在住会員 中河吉由樹 

表具の仕事を始めて、約30年の歳月が流れました。

これまでお世話になり、そしてまだまだこ れからもお世話になる相棒たちの

ひと時の休日をご紹介させていただきたいと思います。

 

写真の説明

 またまた比べてみましょう。左は二丁掛、右は一 

丁掛です。狢(むじな)毛でも、こんなにボ 

リュームの差があります。ちなみに、狸毛は毛先 

が黒くて、根元にかけて白っぽいです。逆に毛先 

が白っぽくて、根元にかけて黒いのが狢(むじな) 

毛となります。

 

どうだったでしょうか? 

少しでも皆様の息抜きに役立てたとしたら、とても嬉しいです。 

今回ご紹介した糊刷毛は、表具師自身の好みやスタイルが

とても大きく表れる道具だと思います。

私の勤めているお店では、馬毛をメインに使われていますし、

作業によってはお借りすること もあります。 

馬毛の糊刷毛の特徴としては、毛全体が黒っぽいです。

決まりはないと思いますが、黒鹿毛の馬の 

毛は糊刷毛に使われることが多いのかもしれません。

ちなみに、箔押しに使用するドウサ刷毛には、

茶色の馬毛が多いです。

こちらは鹿毛の馬の毛を使用しているのだと思います

(ドウサ刷毛は また今後ご紹介します)。 

また馬毛の毛質は、毛が細く、糊を含むと毛がまとまって、

糊離れが私の好みではないですが、 

毛自体は柔らかいです。

さらに言うと、糊刷毛に使用されるのは、

馬のお腹の毛が多いです。 

そして、山羊毛も同様の傾向があります。 

それと比較して、狢(むじな)毛、

狸毛は糊を含んでも毛がまとまったりせずに、

糊離れが良い ので、そこが気に入っています。 

糊刷毛というカテゴリーの中には、

大きく分けて二系統が存在するのですね。 

これからも説明の仕方を考えて、

「相棒たちの休日」をご紹介していこうと思いますので、

どうぞ よろしくお願いします。 

最後までご高覧いただきまして、

ありがとうございました。 

 

 

 

 

My partnerʼs holiday

相棒たちの休日~表具師の道具~

②糊刷毛(のりばけ)

          京都市在住 中河吉由樹

今回は糊刷毛をご紹介したいと思います。

 

糊をつけるために刷毛を使用するのだから、

全ての刷毛は糊刷毛と言うのではないのかと思われ た方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、表具師の認識では、糊刷毛は一般的に薄い糊をつ けるための刷毛を指します。

(ちなみに、濃い糊の場合は「つける」、薄い糊の場合は「ひく」 と言います)

薄い糊とは、一般的には牛乳くらいの濃さとされています。

言葉にすると、前回のマヨネーズくら いとか

今回の牛乳くらいとか、

いかにもアバウトな表現ですが、

実際として、修行を始めたばかりにはこのように教わります。

その後、各々の技量や紙質、環境等に合わせて調整していくよう になります。

この見極める能力もまた、表具師の実力の一つだと思います。

さて、糊刷毛ですが、薄い糊を均一にひくには糊の含みが良い毛を使用します。

山羊の毛で作ら れた刷毛が一般的です。しかし、私はあまり使用しません。

理由は、毛が抜けた時に、白い紙に 白い毛では見にくいからです。

でも、色付きの紙(例えば、古色付きの紙や色鳥の子紙など)に は

敢えて山羊の毛の刷毛を使用することもあります。

もう一つ、馬毛も一般的です。

5寸(約15㎝)幅の狸毛です。狸毛の中でも黒 一、黒ニというランクがあり、

これは黒ニです。

狸毛は高価である上に、今はなかなか手に入らな いと思います。

黒二の特徴は毛先の黒さが若干薄いのと、腰が弱 いことです。